今回の応募状況を見てみますと、風景部門の応募が一番多く、次が人物とイベント、少ないのが施設部門です。
風景は写真の原点と云われます。カメラを始めたばかりの人にも撮り易く、世の中には風景写真が多く見られるのが現実です。しかし最近の風景写真は、少しずつ変化をしています。
現在のカメラは、従来のカメラと違って多機能な装備を持っています。ピントや露出、シャッターは殆ど自動化しており、カメラを向ければ風景でも何でもカメラが写してくれます。写真は自分の感性で写す訳ですから、農村景観においても、まず「素材をイメージする」ことが大切です。例えばイベントでは、その祭りの日取りや内容を事前に把握しておきますと、より詳細な祭りのストーリーが分かります。その中でバックの構成、また踊りであればその形等を精査しておく事が大切です。そうすれば、ストーリー性のある奥行きの深い作品ができます。他の部門も同様です。
農村には多くの農業用施設があるにもかかわらず、施設部門の応募は非常に少ない状況です。施設にも他部門と同様に潜在的な素材があるように思いますが、もう少し農山村地帯を巡ってみてはどうでしょうか?
一般論ですが、自分が好きな農山村の景観を題材として選んで作品にする時には、あまり色彩にこだわらず、内容にこだわることが必要だと思います。今回上位に入賞された作品には、このような作品が見られました。
「カメラに写してもらうのではなく、自分がカメラをフルに使いこなすことが大切です。そうすれば良い作品は生まれてくる。」と云われたのが、かつて写真界の巨匠といわれ、花鳥風月を主体に多くの写真集を残された秋山庄太郎先生でした。「カメラをペンの替わりに使いこなす努力が大切だ。」とも云われたものです。
農山村の景観は、すべての原点と云われるものですから、人間の生活や営み等を題材として、人の心を癒してくれる映像表現に期待しています。
(写真家/川本 貢功)