第23回(令和元年度)
最優秀賞
人物部門 「朝の収穫」
撮影地:出雲市斐川町坂田
行長 好友
行長 好友
画面構成が素晴らしい作品です。
ブロッコリーを手にして、茎を削いでいるカマと手袋が印象画面となりました。
望遠レンズでしょうか、背景のボケが適度によく、早朝の雰囲気が上手く撮れています。又、手袋の位置もよく、背負いの大きなプラスティック製のカゴが農婦と一体となって働く力のようなものを見せています。
この作品の良さは、顔の表情が見えないことにより、どんな人だろうかと想像させるところにあります。
この作品は最初から、多くの審査員が見つめた印象的な作品であり、多くの応募作品の中でもひときわ目立っていました。
作者の努力が見られる作品でした。
(写真家/川本 貢功)
特別審査委員賞(佐野史郎)
風景部門 「苔」
撮影地:鹿足郡津和野町
三浦 秋男
「しまねの農村景観フォトコンテスト」の審査に参加させていただくようになって四年。これまでの「佐野史郎賞」は、意識してはおりませんでしたが、全て少年が被写体となっておりました。
はじけるような笑顔や真剣な眼差しに惹き寄せられ、迷うことなくすぐに選ぶことができておりました。
ところが、今年はかなり悩みました。
例年のように、シャッターを切る人との信頼関係がうかがえるような、純粋な表情の人物写真は、いつものようにすぐに選ぶことができたのですが、この、屋根瓦に生えた苔の写真はそれ以上に強く引っかかったのです。
家屋を風雨から守るために生まれた人工物の瓦と、そこに付着した地衣類との出会いに、この世ならざるものが現れたかのように映り、驚かされたのです。
「どうしてこのようなものが存在しているのか?」という、素朴な不思議と奇跡を感じさせてくれ、同時にそれを切り取った撮影者の存在もまた尊く感じられるのでした。
はじけるような笑顔や真剣な眼差しに惹き寄せられ、迷うことなくすぐに選ぶことができておりました。
ところが、今年はかなり悩みました。
例年のように、シャッターを切る人との信頼関係がうかがえるような、純粋な表情の人物写真は、いつものようにすぐに選ぶことができたのですが、この、屋根瓦に生えた苔の写真はそれ以上に強く引っかかったのです。
家屋を風雨から守るために生まれた人工物の瓦と、そこに付着した地衣類との出会いに、この世ならざるものが現れたかのように映り、驚かされたのです。
「どうしてこのようなものが存在しているのか?」という、素朴な不思議と奇跡を感じさせてくれ、同時にそれを切り取った撮影者の存在もまた尊く感じられるのでした。
(特別審査委員:佐野史郎)
部門賞
風景部門
人物部門
審査委員賞
入選
佳作
SNS賞
応募状況
応募作品総数 509点 | 一般応募 |
風景部門 | 213点 |
人物部門 | 104点 | ||
地域活性化部門 | 97点 | ||
SNS応募 | 95点 | ||
応募者数 | 155人 |
総評
全応募作品について、色彩もよく、シャッターチャンスもよい作品が集りました。
最近のデジタルカメラは従来のフィルムカメラのように、露出とか絞りとかピントとかは関係なく撮れるようになりました。
デジタルが世に出て約20年ですが、フィルムのように枚数を気にすることなく何枚でも撮れるので、数多く撮影してその中からよい作品を選ぶようになってきています。
ただ、そうは言っても、フィルムカメラのように限られた枚数の中で慎重にシャッターを切る姿勢が欲しいものです。と申し上げますのは、何枚か撮影する前後の作品には手振れすることも度々あるからです。特に朝日や夕日を題材としてカメラを向けるとブレが多いようです。
今回上位に入選した作品は、慎重に対峙して撮られた作品となっていました。また、選外となった作品にも印象的な作品が多数見受けられましたが、トリミングの仕方、色調の見せ方等、さまざまな要素がアート作品として少し欠けている場合がありました。
かつては、多くの芸術写真家によって、写真は「光と影の交錯」であり、明暗のハーモニーであると言われました。このような風景的な情景は農村景観には多くあると思われます。近代における農業は、大部分が機械化され、山村の段々畑等にも小型の機械が入っていますが、中には手仕事の作業も残っています。これらが農村景観となって見る人に感動を与えるように撮影ができれば、最高だと思います。
どんなジャンルであっても写真こそは最も社会生活の中で自然を記録し、報道して発表し批判するのに適した芸術であるとも言われながら、近年は一世を風靡した「サロン写真」も影を潜めて近代写真に移り変わってきました。
このことは、農村景観やすべての作品がデジタルになったことが大きな要素となり、スマホ等であらゆる場合でもシャッターを押せば大人から子供まで自由に立派な写真が写せるようになったことから、最近の写真は写り過ぎるという言葉を多く耳にするようになりました。
このような時代に時代考証的な写真はもっとも重要になってきていますし、従来のように苦労して田植えをする訳でもなく機械がしてくれる時代で、農村の景観の移り変わりは早く、その現場を切り取るような作品がこれからの農村景観全体に求められるようになってきました。島根県は多く田園風景が残っていて題材も豊富で、さまざまな祭り等も多くあるので、これらにゆっくりと対峙して撮ってほしいものです。回を重ねるごとに応募作品の傾向も変わってきましたが、見る人に感動を与えるようなこれぞ島根の農村風景だと言う作品が見られることを期待しています。
(写真家/川本 貢功)